2013/12/27

環境デザイン(/「装景」)*の観点から見た三陸ジオパークの可能性 The potentials of the Sanriku Geopark from the perspectives of landscape architecture (/"Sokei” ) *  * A borrowed concept from Kenji Miyazawa



2013年12月4日に、三陸ジオパーク推進協議会の主催により大船渡市民会館で行われた
三陸ジオパーク学術シンポジウム「宮沢賢治が歩いた三陸ジオパーク」にて、
ランドスケイプデザイナーとしてその可能性に関した意見を述べる機会が与えられました。
下に、その全スライドを掲載しました。

私は、宮沢賢治について詳しくはありません。
文学と科学を結ぶ、または科学の諸領域を文学によってつなぎ直す人のように、
いくつかの著作にふれて漠とした印象を抱いてきた程度です。

しかし、偶然に見つけて以来、忘れずにいた彼の言葉遣いがありました。
「装景」がそれです。 
この言葉は、「装景手記手帳」と呼ばれる書画と『「装景手記」ノート』に遺されています。

  この国土の装景家たちは
  この野の福祉のために
  まさしく身をばかけねばならぬ
           「装景手記手帳」, A10頁, 1927年 (想定)

    引用文献 
    鈴木 誠, 宮沢賢治のとらえた「造園家」と「装景家」, 日本造園学会研究発表論文集 (15), 1997年
    http://ci.nii.ac.jp/naid/110004305723

今回はそれを「鍵」として、20分という短い時間の中で、
三陸ジオパークのこれからに対する問題提起を行ってみました。

地と人のかかわりを、科学と文学あるいは詩をあわせて感じ、考えること、そして
 その成果をもとに「この野の福祉のために」環境デザイン (/「装景」) が担うべきことを、
継続して探究していきたいと思います。


参考文献
 
高木秀雄『三陸にジオパークを − 未来のいのちを守るために』早稲田大学出版部、2012年 http://www.waseda-up.co.jp/cat649/post-630.html
 


参考ウェブサイト

三陸ジオパーク推進協議会
http://sanriku-geo.com/

インゼルホムブロイヒ美術館/Museum Insel Hombroich http://www.inselhombroich.de/?lang=en https://www.facebook.com/hirose.shunsuke/media_set?set=a.313011515462630.72175.100002613530684&type=3

IBA エムシャーパーク/IBA Emscher Park
http://www.iba-emscherpark.de/pageID_2507086.html
















*地質学を専門とする方より、引用している情報が古いとの指摘をいただきました。当スライドはこのままにおきますが、以降は改めます。


*地質学を専門とする方より「北上山地全体が付加体であるかのような誤解を受ける」との指摘を受けました。私の説明に不足がありました。


















2013/12/26

早戸温泉遊歩道ランドスケイプデザイン実習 第4回の報告 The fourth report on the Hayato Hot Spring Trail landscape improvements project: September 16-20, 2013



福島県大沼郡三島町早戸区 (五十嵐和吉区長) の只見川左岸にて、916 () より20 () まで、
早戸温泉遊歩道ランドスケイプデザイン実習を行いました。2010年に始めた施工実習の第4回に当たります。
東日本大震災が起きた2011年の7月、当地が「平成23年新潟・福島豪雨災害」に伴う洪水に遭ってからは、
被災地支援活動として続けています。


なお、当地の空中放射線量は0.07μSv/h前後で、この値を地区の方々と確認の上で学生たちと訪ねています。


また、引率と指導は大学院教員の廣瀬、大学教員の田賀、渡部によります。今回はそれを、
煉瓦職人の高山登志彦氏 (高山組) と、卒業生でランドスケイプデザイナーの渋谷隆太氏 (田賀意匠事務所)
補助いただきました。


参加院生、学生は26 (女性14名、男性12)で、代表の依田聡太と副代表の笠原胡桃が、
主に宿泊 (「早戸温泉つるの湯」が湯治場他の施設を提供)
作業用具 (本学備品の不足分を同区の佐久間建設工業株式会社より借用) に関した調整等を担当しています。

食事を準備する当番の学生たち。地場木材によるモデル住宅「つるのIORI」にて
























作業の基本は、地区住民が通した遊歩道へ、周囲から得られる石 (デイサイト質溶結凝灰岩「早戸石」)
(主に杉材) を用いて土留め工や排水工を「近自然工法として」ほどこすことです。

そのことで道を壊れにくく、また歩きよくしながら、
道の先や川やその対岸への視線誘導を工夫するなどしつつ
「只見川左岸のこの地らしい野趣を醸し、かつ温泉施設の傍らから伸びるこの道に
人の手でととのえられた跡が見当たることから、安心感を持ってその野趣が楽しめる」
風景の体験が成るように、毎夏の作業に臨んでいます。

私たちは、このようなことの全体をランドスケイプデザインと考えています。

山側から川側 (画面左手) へ水を導く設えが風景の「地ごしらえ」に
 























今回の作業は、山側の広い範囲から水が集まって河岸を掘り進めている箇所の保護を第一の目的としました。
遊歩道の山側に延長約30m、幅1m、深さ50cmの排水溝をもうけ、そこから掘りとった土は川側に盛って、
河岸の掘り進められた箇所へ水が行かないように図りました。

遊歩道の山側に延長約30mの排水溝を掘る。写真は溝の勾配を確認している様子


排水溝の縁を空石積みで押さえる






















































排水溝に集めた水は、2012年に私たちが整備した河岸の斜路 (2011年の洪水に洗掘された箇所の補強を兼ねて、
2段の石垣と共に設えた) から流し下ろすことにして、路面を掘り、砕石を込めて
水が染み勢いを弱めながら川へ進むようにしています。

2012年施工の斜路伝いに、山が受けた雨水が川へ下ろす
水の勢いを弱めつつ砕石を押さえるために杉丸太を斜めに渡す


また、稲荷神の祠が置かれた小高い場所へ上がる小道が参道として見えるように、
フジなどのつる植物を刈り払い、杉丸太を立てて道の存在を際立たせました。


祠の参道を整備する。杉丸太の段はここでも水の減勢のため斜めに設置


施工最終日。砕石や小枝を拾い、土を均す

作業報告会。地区の方々へ参加学生が一人ずつ作業の意図と実際について説明
報告会を終えて、学生は写真やスケッチにより作業成果を記録に残す























































このように土地から資材を得て水理と生態に則して行う技術は土地に合い、
私たちが復旧復興の支援に通う津波被災地の環境形成にも (たとえば三陸国立復興公園、三陸ジオパークの部分として
ふさわしくするために) 有効と考えています。

早戸地区の方々のご協力を得て、近自然工法の応用の上に地域の自然、歴史の解釈と
人々の思いを汲むことを志向したランドスケイプデザインが実現できています。
そのことに、今年も厚くお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
来夏、またお目にかかります。



早戸温泉石積み実習参加者

■企画/設計/施工

 廣瀬俊介 (東北芸術工科大学大学院環境デザイン研究領域 准教授)

■設計主幹/施工監理

 田賀陽介 (東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科 准教授)

■運営/設計/施工

 渡部 桂 (東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科 講師)

■施工監理助言役

 高山登志彦 (高山組)

■施工指導

 渋谷隆太 (田賀意匠事務所)

■施工(ただし各部の構造・意匠を設計者監修のもとに決定)

 依田聡太 (東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科3年) *学生代表

 笠原胡桃 ( 〃 2年) *学生副代表

 菅原かずさ( 〃 3年) *炊事統括

 坂本香織 ( 〃 2年) * 〃

 庄司はるか ( 〃 3年) *広報担当

 栗田知騎 ( 〃 2年) *   〃

 笠原隼也 ( 〃 3年) *資材担当

 山口稜平 ( 〃 2) *   〃

 菅 拓哉 (東北芸術工科大学大学院 環境デザイン領域2年)

 遠藤直人(東北芸術工科大学 建築・環境デザイン学科4年)

 小澤絵莉奈 ( 〃 4年)

 熊谷悠子 ( 〃 4年)

 島貫梓真( 〃 4年)

 鈴木富水佳( 〃 3年)

 佐藤 享( 〃 2年)

 高梨光剛 ( 〃 2年)

 武山加奈( 〃 2年)

 齋藤綾子( 〃  美術科洋画コース2年)

 青木陽太郎( 〃 建築・環境デザイン学科1年)   

 佐藤享樹 ( 〃 1年)

 佐藤ゆり ( 〃 1年)

 田村奈緒美 ( 〃 1年)

 中塚日菜 ( 〃 1年)

 原田章江 ( 〃 1年)

 松本晴夏 ( 〃 1年)

 佐藤駿平 ( 〃 2年) *前半のみ参加



 以上




追記

これまでの実習報告は、東北芸術工科大学建築・環境デザイン学科ウェブサイトにてお読みいただけます。


1回報告:


1回続報


2回報告:


3回報告: